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本職の松本健太郎氏に聞く!データサイエンティストの仕事とは?

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こんにちは、今回は何かと世間を賑わせている、データサイエンティストとAIの話です。

世間では「データサイエンティストに転職すると年収が上がる」「AI時代にはコーディングを出来ないと生き延びられない」と言った煽情的なフレーズが飛び交っていますが、実は、「データサイエンティストが毎日何をしているのか」「クライアントは誰で、どんな仕事やサービスを提供していているのか」その実態を正確に理解している人間は少ないやもしれません。

今日はデータサイエンスに関して多数の書籍を出版され、東京大学の松尾豊先生にインタビューを行うなど、データサイエンティストとして精力的に活動されている、松本健太郎さんにロングインタビューを行うことが出来ました。

データサイエンティストとは何か、その実態とまやかし。或いは社会人や学生がデータサイエンスやAIを学ぶには何をどのようにすれば良いのか、その全てがこのインタビューで明らかになります。前編・後編を合わせて16,000字強とかなりボリュームのあるインタビューとなっていますが、お楽しみ頂ければと思います。

 

【前編】

・インタビュー対象者:松本健太郎さんの現職および経歴について

・デジタルマーケティングに限界を感じ、データサイエンスの世界へ

・データサイエンティストとはどんな職業なのか

・データサイエンティストのレベルを測るとしたら

 

【後編】

・AIの現状と問題点、そしてビジネスマンの勉強法とは

・AIとデータサイエンスに共通する「本質」とは

・データサイエンティストを目指して転職するな

 

 

インタビュー対象者:松本健太郎さんの現職および経歴について

 

―本日はよろしくお願いします。まずは松本さんを知られていないブログ読者の方も多いと思いますので、まずは現在の松本さんのお仕事について、簡単に教えて頂けますでしょうか?

 

現在は株式会社デコムと言う、五反田にある企業のR&D部門を統括しています。

 

世間で言うR&D(Research & Development)と言うよりは、社内の独立遊軍的なチームとして、ゼロイチ規模の小さな改善の積み重ねを担当しています。

2018年12月の時点でデコム自体が15人程度のそれほど大きな企業では無いので、改善活動と言うものがどうしても先延ばしになりがちであったと言う傾向もありまして「ひたすら0→1(ゼロイチ)の立ち上げを行う」「1から10に広げる」に取り組む要員として、2018年4月にデコムに参加しました。

 

―デコム社自体が設立された際のコア事業はどのようなものだったのでしょうか?

 

インサイトの発見です。

デコムの代表取締役の大松は大手広告代理店出身です。

通常、デジタルマーケティングのLPO(Landing Page Optimization)の世界では、ABテストなどを用い、ひたすら小さな改善を繰り返してゆきます。

その結果、CVRが0.1%上がる、0.5%上げる・・・と言う改善を狙ってゆくのが通例なのですが、ある日、大松が「CVRを50%上げる方法はないだろうか」とクライアントさんに持ち掛けられたことから、インサイトと呼ぶ、消費者や人間の心理に着目をしたのです。

 

要は、言われるまでは気づかないけれど、言われたら「そう、それが欲しかったんだよ」と言われるような隠れたニーズを見つけ出す、という事です。

 

例えば、コンビニでの支払いを考えます。

今世間はキャッシュレスに向かっていますし、私もその方が便利だと思いますが、消費者の中には未だに現金で支払いを行っている人がたくさんいます。

このケースだと「現金で支払うのは、キャッシュレスで決済をしたことが無いので、その便利さが分からないからである」との仮説が立てられます。要するに「従来のやり方で物事を進めているけれど、新しいやり方を知っている人間から見ると『何て不便なんだろう』と教えてあげたくなるようなケース」が世の中に山ほどあって、それをデコムはインサイトとして捉えて、

このインサイトを発見することをビジネスにしているわけです。

 

―知っている・知らない、の知識のギャップがすなわちインサイトである、と言うことでしょうか?

 

知識だけではなく、インサイトとは、「消費者を動かす隠れた心理」であると定義しています。そんな便利なものがあるんだ、と驚き、それがそのまま「買いたくなる」「使いたくなる」と言う欲求に直結するイメージです。

 

例えば、とあるヨーグルトドリンクがあったとします。大抵の場合は本人の腸内の改善、健康の改善などを前面にPRして販売していますが、でもこの時期(12月)ならば、受験対策としてPRすることも出来ます。要するに「受験生の子ども本人だけではなく、家族が風邪を引く予防にも是非!」と言うアプローチも、考えようによっては効果的なわけです。

受験生にとって、同居している家族から風邪をうつされてしまうことは1つのリスクとして十分に考えられますから。

 

―面白い話ですね! 商品やサービス自体は変わっていないのに、別の角度から光を当てることで別の訴求効果がうまれる・・・と言うことですね。

そのノウハウはどこから生まれたのですか。

 

デコムは2004年に創業しているのですが、創業以来、年100件と言う案件をこなす中で社内に蓄積されたノウハウや手法ですね。

 

―どのような方がクラインアントになるのでしょうか? また、1つの案件に関してどれくらい時間をかけられているのでしょうか?

 

FMCG(日用消費財)系がメインですが、大手の製造業やメディアが顧客になることもあります。あとは近未来におけるテーマ、例えば「東京オリンピックの後に嗜好される商品は何か」などに代表される、かなり秘匿性の高い、かつ具体的な案件を多数頂いております。

 

―そこまで案件の秘匿性が高いと、営業の際に実績のPRが難しいですね。

 

はい。ただ幸いなことに、近年はクライアントさんの方からお話を頂けることが多いので、そこは助かっています(笑)あとは代表の大松が「『欲しい』の本質」と言う書籍を出版したので、そこから興味を持って頂けるケースもありますね。

 

―そこから、ブランディングと商品プロデュースに落とし込んで行くのですね。

 

はい。そこにプロモーション戦略、新規事業開発、新規事業企画なども加味します。

 

―その場合、案件の単価と言うのはどの程度になるのでしょうか?

 

数ヶ月から、長いものになると半年程度に至るものがほとんどで、単価としては800~1,600万円程度です。

 

―ここからは、もう少し松本さんご自身にフォーカスさせて頂きたいと思います。松本さんはデコムに勤務する傍ら、データサイエンティストとして書籍も出版されています。他方、AIに関してもインタビュアーとして数々のインタビューをこなされています。

 

AIに関してはインタビューをする側ですね。

そもそもAIと一口に言っても、「AIとは何か」と言う定義自体が議論の最中にある状態です。例えばPython(パイソン)を使って、Tensorflow(テンソルフロー)でディープラーニングを実装することは出来ますが、AIに関して言えばエンジニアと言うよりは、物書きであると思っています。

 

―別の対談記事などで「もともと数学が好きだった」と話されていましたが、プログラミングやコンピュータサイエンスはお好きだったんですか?

 

いえ、新卒で入ったIT系の企業に営業として入社したのですが、社員数が10数名程度のベンチャー色が強い企業だったので、そこで営業職から技術職に転籍をして、そこからコーディングの勉強をしました。なかなか地獄のような環境でしたが(笑)

そう言ったきっかけで、コーディングは、23歳の時にPHPの学習を始めました。

 

そこからエンジニアとしての経歴が始まり、プログラマー、データベースエンジニアなどを経験しました。そのタイミングで、会社の都合もあり「社内で蓄積されたデータを使用して何かできないか」と言う話があり、データサイエンスを独学で学び始めました。

ただ独学では厳しい部分があったので、多摩大学の社会人大学院に通いました。その結果として、コードレベルでの実装は出来るようになった、と言う感じです。

 

―新卒で入られたITベンチャーは、どのような観点で選ばれたのでしょうか?

 

もともと、小さい会社に行きたい、と言う気持ちがありました。それと、その会社説明会に行った時に、来ている学生の人数より、見学に来ている社員の数が多くて「この会社は暇なのか」と(笑)。面白そうな会社だと思い、入社を決めました。

 

―ベンチャーに行った方が、何でもバリバリできるという発想ですか?

 

そうですね。2006年に就職をしたのですが、当時は第2次のベンチャーブームでした。時期としては、堀江貴文さん(ホリエモン)が逮捕される前で、GMOの熊谷さんもいたし、サイバーエージェントの藤田さんもいて「ベンチャーで仕事しているってかっこいいよね」と言う風潮がありました。

 

―新卒で入社された企業はどのようなサービスを提供する会社だったのでしょうか?

 

ソフトウェアの開発がメインで、柱となる事業は3つでした。具体的には「デジタルマーケティングの効果測定」、「ECサイトを構築するプログラムを、オープンソースで提供する」と「ECサイトの受託開発」と言うものでした。

その中で私は「デジタルマーケティングの効果測定」事業の、開発担当になりました。

 

今でこそアドテックと言う言葉は主流になりましたが、当時はまだ「デジタルマーケティング」と言う言葉自体が浸透していない時代でした。「デジタルマーケティング」と言う言葉だけですごい、と言われるような時代でしたね。

広告の効果測定とするとなった時に、デジタルマーケティングの認知もないし、DSPと言ったツールもなく、純広告かアフィリエイトかリスティングくらいしか商材がなかった時代です。アドテックという単語が登場する前の時代ですね。

 

―そもそもその時代は、アドテックと言う言葉の定義がないですよね? マーケティング自体は古くからありますが、デジタル領域におけるマーケティングはほぼ未開の地であったと言うか。

 

そうですね。その分野のパイオニアの1つかと思います。当時は全然わかりませんでしたが。

 

―敢えてそのような領域を選ばれたのは、ベンチャーの中でも先進的なところに行きたかったと言うことなのですね。「開発兼営業」と言うのは、プログラムを自分で開発して売って・・・と言う繰り返しですか?

 

当時、開発と営業は既に分かれていました。開発になってからは、ひたすらコーディングに明け暮れていました。営業からの修正の要望を反映させたり、新しい機能を作ったり、と言う感じです。

 

―拘束時間は長かったのでしょうか?

 

超ブラック企業でしたね(笑) 朝9時に始業して、22時、23時まで会社に残るような日々でした。サーバー落ちやデータベースの不具合などの障害対応だと、夜中の2時や3時でもばんばんメールが来ます。お風呂の時に気づかないとダメなので、メールが鳴ったら分かるように、お風呂場のドアを開けて入ったりもしました。

 

―当時の年収はいくらでしたか。

 

400~450万円くらいでしたね。大阪の会社なので、東京の8~9割程度の給与水準だったと思います。

 

―その1社目の企業には何年くらい在籍されたのでしょうか?

                                

約11年間です。2007年に入社して、2018年2月に退職しました。

 

―転職をされた際の、環境を変えようというモチベーションは何だったのでしょうか?

 

そうですね。所属している組織と言う部分もありますが、デジタルマーケティングという部分に関して、これ以上は無理かなと思っている部分がありました。

 

デジタルマーケティングに限界を感じ、データサイエンスの世界へ

 

―自分の出せる価値に限界を感じられた、と言うことでしょうか?

 

個人が、組織がと言う話ではなく「デジタルマーケティングと言う行為自体で、提供できる価値というのは、劇的に変化はしないのでないか」と思ってしまったのです。

例えば、色々な商品を売るということに関して、Facebookで宣伝しましょう、Twitterでやりましょうとなった時に、そもそもの商品の質が著しく劣っていたら、どう頑張っても売れません。

広義でマーケッターの人は物を作れているかといったらほとんどの人が作れていません。プロモーションに徹しています。それはマーケティングではなく、単なるプロモーターではないかと思うのです。

そしてそれはデータサイエンスに通じる部分でもあって、基本的に僕はデータサイエンスで世の中をひっくり返せるものはあるかというと、できないと思っている人間です。

 

―では、何故データサイエンスの業界に転職をされたのでしょうか?

 

正直な話、行って分かりました。データサイエンスに対して、色んな人が過大な期待をしている。仮に何らかのデータがあったとして、そのデータより大きい価値はそこから生まれません。

例えば製造業でデータが手元にあるとして「ここから新しいこと何か分かりませんか?」と言う依頼を受けたとしても、分析して分かるのはそのデータの範囲です。

データに書かれていないことが、データサイエンスを使って分かるというのは基本的にはあり得ない。

 

―つまり、顧客は過大な期待をしていて、データサイエンス、AIという言葉が先行していて、最新のノウハウを使えば、自社にあるデータを丸投げするととんでもなく新しい発想がでてくるのではないか、爆発的に売れる商品が開発できるのではないか・・・と、現実とあまりにかけ離れた期待をもたれてしまうと。

 

その通りです。例えば小売店がクライアントだった時の事例なのですが、「商品のカタログの見せ方を変えることで、もっと劇的に売上が上がりませんか? どう、クリエイティブに改善をしたら良いか考えて下さい。」と言うお仕事を頂いたことがあります。しかし冷静に考えて、どう見ても商品の品質が悪い。マーケットのニーズに合っていない。クライアントさんに、その辺はどうですか?と聞いた時に、マーケティング担当の方は「いや、それは僕の仕事ではないです」と。

 

―大きい会社さんですか?

 

比較的大きい会社です。大きい会社なので役割が分担されているというのはあるかもしれませんが、本当のマーケッターはそこをちゃんと直すのが仕事だなと思っているので、そう言った体験から、マーケティングの最上流に行きたいと考えるようになりました。

 

―最上流と言うのはどういう事でしょうか?

 

一番の川上ですね。商品開発の一番の始まり、要するに「商品企画や経営企画と言われている人たちが2年後、3年後を見据えた形を作っている」という現場に行かないとどうしようもないと思いました。

 

―先ほど、データサイエンスでは世の中はひっくり返らないというネガティブな発言がありましたが、その真意としては、日本の組織上の問題、或いは習慣として「マーケッターがプロモーションに徹していて、商品開発・商品企画と言う段階までのフィードバックが十分になされていない。そこに根本的な問題があるから、データだけをいじって提案しても何も変わらない」と。そこに絶望というか、モヤモヤがあるわけですね。その時に上流に行かれたいと思ったと。

 

そうです。それで転職をしよう、と思いました。たまたま現職の創業者の大松とは大学院の同窓生であったので、タイミングと、そのご縁を活かして転職をさせて頂きました。

 

―転職のエージェントを使ったわけでないのですね。

 

はい、使っていません。大松に声をかけて頂きました。

 

―松本さんは既に社会人を10年ほど経験されてキャリアを積まれていらっしゃいますが、その中で大事にしてきた価値観、こういうことは自分のアウトプットとしてこだわってきた、と言うこだわりなどはありますか?

 

大きく分けて2つあります。1つは、仕事を断らない。とりあえずやってみる。やってダメならあきらめる。もう1つは、自分の将来を設計しない。

 

―それぞれについて、もう少し詳しく聞かせてください。なぜそのような考えに至ったのでしょうか?

 

まず「仕事を断らない」と言う話ですが、これは単純で「向いている、向いていないは自分で判断すべきものではない。何か理由があって相手が自分に依頼しているであろうし、得手不得手はあるにせよ、やってみないとわからない」と思うからです。

 

―社会人だとプロジェクトを抱える数とか負荷は変動するものだと思います。120%くらいの負荷がかかっている時に、さらにもう1件仕事をお願いします、と言われたら、正直な話、結構うんざりしますよね。そういう時でも断らないのでしょうか?

 

断らないです。

 

―現実問題として、どのように対処するのでしょうか?

 

残業するか、土日に出るしかないですよね。

 

―時にはプライベートを犠牲にしてまで断るべきではない、と。

 

そもそも、僕にはプライベートを犠牲にするという感覚がありません。

プライベートと仕事を分けた感覚がない。

 

―そこは自分の仕事はアウトプットとか評価にこだわりたいからですか。

 

単純に評価されたいという思いはありますが、仮に土日はプライベートだとして、そこで何をするんですか。家でゴロゴロするくらいなら、仕事を通じてスキルや経験を得られるから、それはそれで良いと思います。だから、あまりプライベートを犠牲にする感覚が無いのですね。

 

―メディアアーティストの落合陽一さんが「ワークアズライフ」という考え方を提唱されていらっしゃいます。彼はお父さんが作家でハードワークだった。並外れたアウトプットを出すためにはとことん時間を削ってやらなければいけないんだ、という話をされていましたが、それに近いものはありますか。

 

先日、田原総一朗さんにインタビューをさせて頂いたんです。その時に彼が「趣味はなぜできたか」と言う話をされていました。要は、仕事がつまらないから、人生が面白くないから趣味で釣り、野球、余暇が出来たと。私自身も仕事がつまらないと思ったことがあまりないので、そういう意味ではプライベートを犠牲に、という感覚はないです。

 

―それでは逆に、松本さんにとって、仕事の楽しさとは何ですか。

 

世の中を動かしている感じ、ですね。結局、前職で商品やサービスを作っていた時も、全てでは無いにしろ、確実に日本のデジタルマーケティングの歴史を動かしていたという自負がありました。自分の仕事が、歴史を作っていると感じられる瞬間と言うのはやはり、ワクワク感があります。

 

―自分が開発したサービス、プロダクトをお客様に使って頂いて価値が生まれたら、世の中回っているよね、とそしてその発信の大元には自分がいたら嬉しいよね、という感じなのでしょうか?

 

そうですね。

 

 

データサイエンティストとはどんな職業なのか

 

―ここからは、このインタビューを通じて、データサイエンティストと言う職業について、松本さんに解説をして頂きたいと思います。そもそも、データサイエンティストという職業はどう言ったものなのでしょうか?

 

データサイエンティストとは、データリテラシーを持って仕事をしている人たちのことだと思います。

 

―データリテラシー、つまり、データを読み解く能力ということですね。

先ほど「クライアントからデータを貰って読み解ける情報には限界がある」とおっしゃっていましたが、リテラシーの高い低いで、読み解けるレベルに差が出るのでしょうか?

 

出てくると思います。少なくとも、ちゃんとしているデータサイエンティストは「どのデータがあって、本来ならどのデータを取らないとならないか。そして今手元にこのデータが無いですよね」と指摘が出来ることが必要です。

 

―データを利用した分析の全体的な流れ、脳内イメージのようなものがあって、データを提示されたとしても、これだけでは十分じゃない、と指導できるという事ですね。

 

そうです。

 

―そもそも、なぜこんなにデータサイエンスに注目が集まっているのでしょうか?

ビッグデータと言う概念や、その活用方法に注目が集まったことが大きいのでしょうか?

 

そうですね、ビッグデータですね。ビッグデータがあって「このデータはどう活用したらいいんでしょうか」となったと言うタイミングで、Googleが「データサイエンティストはセクシーな職業なんだ」と言い始めて、そこで社会的な認知が高まったのだと思います。

 

―先ほど、データサイエンティストの存在意義はデータを分析することに留まらず、「データがないことを指摘すること」や「商品開発に落とし込むこと」である、と仰っていましたが、実際にデータサイエンスを仕事とする上で、楽しいことや辛いことと言うのは、どう言ったものになるのでしょうか?

 

ほとんど、辛いことが多いですよ(笑) データサイエンティストと言う仕事自体を、理解されないですから。みんな、魔法使いと思っているじゃないですか。

 

―言葉が一人歩きしちゃったが故に、何でもできる魔法使いみたいに思われてしまうと。期待が大きすぎるという事ですか。

 

そうですね。まわりの期待が大き過ぎていますね。クライアントさんから「こういうことを考えていますが、何とかしてくれませんか」と言うお話を頂いた時に「データサイエンスが役に立てるのは、こことここまでです」と言う話をすると、「え、そこまでですか・・・」という反応が出てしまう。その反応自体にはもう慣れましたが、やはりその部分は残念に思います。

 

―データサイエンスと言う一種のバズワードに飛びつく前に、クライアントサイドも、もっと勉強して欲しい、という事ですね。ただそうは言っても、ビジネスですので受注はしなくてはいけない。

 

そうですね。前職の時もそうでした。

 

―クライアントさんに「もっと勉強をしてくださいね」と言いたくても、なかなか言えませんよね。

 

だから、翻訳するしかないです。相手が理解できる言葉に翻訳するというのもデータサイエンティストの仕事なんだなと思います。

 

―データの分析そのものがつらいというよりも、言葉が一人歩きしていて過大な期待を押し付けられてしまうことが残念である、と。

 

単純に面倒ですよね。相手の誤解を解くことがなぜ私がしなくてはいけないかと。

 

―クライアントサイドの勉強不足でしょう、と。

 

そんな感じです。

 

―逆に、日本や海外で、実名でこんなデータサイエンティストがすごい、と言うような方はいらっしゃるのでしょうか?

 

難しいですね。日本の国内だと「統計学は最強の学問である」を書かれた西内啓さんもすごい方ですし、滋賀大学の河本さんも有名な方です。

 

―事例としてはどうでしょうか? ビジネス系の雑誌などの記事では「データサイエンスがすごい」と言うような記事を目にしますが、実際のビジネスの現場で圧倒的な成果を出した、と言うような事例はあるのでしょうか?

 

成功事例自体はそれかしこにあると思います。あると思いますが、ギャップがあるかもしれません。「データサイエンティストがいれば売上が大幅に改善する」と言うような言われ方をしてしまいますが、データサイエンティストはあくまで分析するだけの人間なので、分析を活かして売上改善のオペレーションを実行している部隊がいるはずなんですね。

だから売上の改善をデータサイエンティスト1人が成し遂げたわけでは無いですし、売上改善の複数のオペレーションが、全て当初の予定通りに進むなんてこともないわけです。

データサイエンスだけの力だけではなく、恐らく実際はチームの力なんだろうな、思うことはよくあります。

 

―どちらかというと、コンサルタントの方が持つ悩みに近いかもしれませんね。本当に良いレポートを書き上げ、良い提案をしてもクライアントサイドで都合の良いように解釈をされてしまったり、あとオペレーションの問題で提案が実行できなかったなど。

 

そういうイメージです。

 

データサイエンティストのレベルを測るとしたら

 

―データサイエンスの初学者向けに、データサイエンティストの実力を測る指標みたいなものを提示するとしたら、やっぱりリテラシー、読みとく力という事になるのでしょうか?レベル1、2、3とあって、レベル1が初心者、レベル3がエキスパートだったら、どういうイメージですか。

 

リテラシーに尽きますね。レベル1、要は初心者というのは、相手の言っている事や、提示されたデータをそのまま信じてしまう人です。

 

―疑う能力がないと。

 

レベル3は、相手の言っている事やデータをそのまま鵜呑みにせずに、実際の現場に行き、ああそういう事ね、と現場で納得を出来る人。つまり、現場に足を運べる人だと思います。

 

―なるほど。レベル2はその間ですね。

 

そうです。

 

―ただ、現場に行くという事は、業界の専門知識がないと厳しい部分がありますよね。業界別のデータサイエンティストと言うのは、あるのでしょうか?

 

あると思います。業界に詳しい人が当然できるのだと思います。要は、データとして上がってきた数字に対するラベル付けみたいな話です。僕は製造業のことは全然詳しくないですし、製造業特有のこともあるかと思いますが、それは勉強をすればと思います。

 

―松本さんご自身としては、デジタルマーケティングに特化されたいという思いがあるのでしょうか?

 

あまりこだわりはありません。幅広くやりたいと思っています。

 

―ところで、データサイエンティストのトップクラスの方と言うのは、どこにいらっしゃるのでしょうか? 一般企業なのか、シンクタンクなのか、大学なのか・・・。

 

企業が多いかもしれないですね。例えば、航空関係とか、大手飲料メーカーとか、大手の企業に所属されていらっしゃる方が多い印象ですね。

 

―大企業のマーケティング部門にいらっしゃると言うことでしょうか?

 

退職されましたけれど、元USJの森岡 毅さんも、現職のマーケティング企業を設立するにあたって、元P&Gの今西 聖貴さんと言うトップクラスの数学者連れてきました。色々なマーケティングソリューションを提供されていらっしゃいますが、基本的なベースとしてはデータサイエンスがありますよね。

 

―データサイエンティストとして名前を売って年収を上げていく、というより大企業の中でデータを使いアウトプット、成果を出していくというのが、結果的に年収も上げていく、と言うことになるのでしょうか?

 

大企業の中でと言う方が一般的だと思います、現段階では。

 

―松本さんご自身の将来像としては、今年デコムさんに転職されましたが、5年後、10年後にどうなりたい、と言うイメージはありますか?

 

あります。デコムが注力しているインサイトの領域において、国内・国外を問わず、インサイトをベースにしたデータサイエンティストは居ないと思っています。海外の、いわゆるマーケティングリサーチでも、データサイエンスは重要視されていますし、日本の市場においてはそういう方はほとんどいらっしゃらない。だからこの領域で10年やれば、さすがに第一人者になれるだろう、とは思っています。

ただ、さきほど価値観の話がありましたが、基本的に将来設計はしないタイプですので、そういう感じになればいいな、くらいの感じです。

 

―なぜ、将来設計をしないのでしょうか?

 

する意味がない、と思っています。将来がどうなるかわなんて、誰にも分からないじゃないですか。

将来の夢を思い描くという事は、自分のその他の可能性を捨てるという事だと思っています。向いているか、向いていないと言うのは40歳くらいになればなんとなくわかるかなと思っています。

 

(後編に続く。近日公開)

 

【後編の内容】

 

・AIの現状と問題点、そしてビジネスマンの勉強法とは

・AIとデータサイエンスに共通する「本質」とは

・データサイエンティストを目指して転職するな

 

 

【参考情報】

 

 

松本健太郎さんのFacebookアカウント

https://www.facebook.com/kentaro.matsumoto.0716

 

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